学生から教員への橋渡しとなる教員養成講座

学生から教員への橋渡しとなる教員養成講座

学生から教員へ。教職に就く学生は4月1日を迎えたその日から、一人前の教員としての役割を求められるようになる。岐阜聖徳学園大では、卒業生が教員生活の初めに戸惑わないように、就職課主催の教員養成講座で教員としての技術や心構えを指導している。教員の早期離職を防ぐ手立てとして注目の取り組みを取材した。

新年度が始まって早3ヶ月。読者の周りの新任教員たちは、教師としての仕事に徐々に慣れつつある頃だろうか。

多くの一般企業では新人研修を経てそれぞれの職場に配属となるが、教員は違う。4月1日を迎えたその日から、新任教員はベテラン教員と同じように、先生として児童や生徒の前に一人で立たなければならない。これは教員という職業を選んだ者の宿命とも言える。

右も左も分からない状態で、教育実習とは比べ物にならない量の授業準備や学校運営に関わる仕事などに取り組まねばならず、大学時代に抱いていたイメージとのギャップに苦しむこともあるだろう。できないことや分からないことを周囲に相談できず、一人で悩みを抱え込んでしまう人もいるという。

こうした大きな壁を前にして、せっかく教員になったにも関わらず、早々にリタイアしてしまう人が少なからずいるのは残念なことだ。

教員生活に順応する鍵は4年生後半の過ごしかた

以上のような新任教員を取り巻く状況を念頭に、教員就職率で全国有数の数字を誇る岐阜聖徳学園大では、学生から教員へのスムーズな移行のため教員養成講座を開いている。中学校の校長職を経て、現在は岐阜聖徳学園大の就職課で講座講師を務める轟喜義さんはこう話す。

「学生は教員採用試験の合格にばかり目が向きがちですが、それだけがゴールではないと伝えています。試験に合格することで教員になるのではなく、長年教員を続け、定年まで勤めてはじめて教員になるのです。そうした心構えを植え付けることで、目先のことにとらわれず、さまざまな困難に立ち向かっていくことができるようになります」

とはいえ、教員採用試験への合格は大切だ。4年生の前期に開講される「前期教員養成講座」までは合格を第一目標に、集団面接や願書の書き方の対策を軸とした指導を行う。模擬授業などで教員としての能力も並行して磨いていく。

教員採用試験が終わると、教員の仕事の基盤である「授業づくり」と「学級づくり」に焦点を当てた「後期教員養成講座」がスタートする。4月からの教員生活に向けて、技術や心構えを身に付けるのが目的だ。教員の先輩である講師が、教育に携わる実務家として何を考えどう行動してきたかなど、具体例を交えながら思いや経験を学生に伝えている。

「授業づくり」は模擬授業、「学級づくり」は担任第一声の作成を中心に据えた指導を行う。学級づくりの王道は、学級目標に向かっていかにクラス全体で困難を乗り越えていくかにある。その第一歩として、学級開きの際にどのようなクラスを作りたいかを子どもたちに伝えるのが担任第一声であり、学級づくりのベースとなるものである。

講座において学生は、自分が作りたいクラスの姿をイメージし、学級目標を思案しながら、授業初日に配る学級通信を実際に作ってみる。担任第一声について深く考えておくことで、初めて会う子どもたちに対しても思いをしっかりと伝えやすくなる。教員第一声があやふやでは、子どもたちの信頼は得られない。教員第一声は教員としての第一歩を上手く踏み出すための重要なポイントなのだ。

また、教員養成講座では、前年の卒業生を招いてOB・OG会を開催している。大学のある岐阜県だけでなく、さまざまな都道府県から集まった卒業生から、教員1年目の各地域のリアルな様子を直接聞くことができる。学生にとっては教員生活の実態を知るための貴重な機会であり、教員としての心構えを作るきっかけとなっている。

プロの教員を育てるのは学生の熱意と大学の伝統

岐阜聖徳学園大には、教員になりたいという強い熱意を持った学生が数多く集まる。教育学部のある羽島キャンパスは、看護学部の学生を除く同学年約500人のうち300人前後が教職に就く環境だ。

周囲の教員志望の学生と同じ方向を目指して頑張ることができるのは心強い。前出の轟さんは学生の様子についてこう語った。

「熱意ある学生を送り出してくれる高校の先生方に感謝しています。本学の学生は、教員になりたいという中学・高校で育んだ願いを大切に持ち続け、自ら工夫や努力を重ねて教員採用試験を乗り越えていきます。本学の良さである学生の熱意と教員輩出の伝統を指導でも前面に出し、『Be Professional』を掲げ、長く活躍できるプロの教員を育てるようにしています」

岐阜聖徳学園大では、教員採用試験に向けた指導に終始せず、教壇に立つことを念頭に、スムーズに学生から教員に移行していくための指導にも力を入れる。困難を乗り越えていける岐阜聖徳学園大らしい教員が育まれている背景には、こうした取り組みがあるのだ。

熱意を絶やさず4年間頑張れば、必ずプロフェッショナルとしての教員になれる。そんな環境がここにはある。

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