実力主義で“獲り”に行く「全員選考対象」 の奨学金制度

実力主義で“獲り”に行く「全員選考対象」 の奨学金制度

貸与型や給付型など様々なタイプの奨学金制度があるなかで、岐阜聖徳学園大学では入試時の成績で学費または授業料を全額あるいは半額免除する “スカラシップ”という制度を設けている。理由書や申請書も必要とせず、出願者全員が選考対象となる奨学金の詳細とは?

ここ数年、奨学金の返済についてメディアで報じられることが多くなった。日本の奨学金制度は貸与を採用する団体が多く、卒業後は低利子あるいは無利子での返済が義務付けられる(とはいえ条件を満たせば半額あるいは全額が免除になるケースもある)。

進学の夢を後押しする重要な役割を担っている貸与型奨学金だが、一方で、就職の失敗により返済が厳しくなったり、そうでなくとも「借金がある」という心理的な負担から人生の可能性を自ら狭めかねないというネガティブな側面があるのも事実だ。

そんななか、親の収入や本人の成績などの条件をクリアすれば返済を伴わない給付、あるいは授業料免除などの奨学金システムを持つ事業団体や大学が増えている。大学院の進学や海外留学、あるいは家業を継ぐ、はたまた近年では起業を目指す学生も増加するなど、卒業後の進路は「就職」以外にも多くの可能性と選択肢がある。

そのため、近年では後者の奨学金制度に力を入れる大学も増えてきている。なかでも岐阜聖徳学園大学の「スカラシップ制度」は、全国でも非常にユニークな自動エントリーシステムを採用して注目を集めている。

申請や手続きは一切不要出願と同時に自動エントリー

岐阜聖徳学園大学では、スポーツや文化活動などの課外活動で優れた成績を残した学生、あるいは災害で被災した学生など、その対象を様々にした独自の奨学金制度が設けられている。

そのなかの一つ、「スカラシップ」という制度は教育学部・外国語学部・経済情報学部・看護学部を一般入試(B日程)で受験した学生のうち、成績上位者の学費(授業料+施設費+教育充実費の合計)の全額、あるいは授業料の全額/半額を免除とするシステムである。

この制度でユニークなのは、システム適用のための理由書の提出や事務的な申請等をする必要がなく、出願した “全受験生”を対象としていることだ。すなわち、出願すると同時に、全受験生が平等に自動エントリーされているということを意味する。

合格者のなかでスカラシップ制度が適用となった受験生は入学手続き時の費用から免除され、学費あるいは授業料の全額・半額免除が最長4年間継続される。免除規定は学部によって異なるが、一例を挙げると卒業後の教員就職率が高く、教員志望の学生から人気の高い教育学部の場合、スカラシップが適用されれば授業料・施設費・教育充実費を含む年間の学費106万円が4年間免除となり、在学中の免除額の合計は424万円にのぼる。

貸与型や給付型と異なり、免除型は家計に対する学費負担が直接的に軽減されるため、その予算をパソコンなどツールの購入や資格取得や留学など“学びの投資”に回して更なる成長を促進することもできる。

学部ごとのスカラシップ制度の詳細は以下の通り。(数字は2017年度入試での実施内容)

内容(最大) 免除額
教育学部 授業料・施設費・教育充実費を合算した学費を最長4年間全て免除 年間
106万円×4年間
424万円
外国語学部 授業料を最長4年間全額免除 年間
54万円×4年間
216万円
経済情報学部 授業料の全額、もしくは半額を最長4年間免除 全額は年間
54万円×4年間
216万円
半額では年間
27万円×4年間
108万円
看護学部 授業料の全額、もしくは半額を最長4年間免除 全額は年間
80万円×4年間
320万円
半額では年間
40万円×4年間
160万円

※経済情報学部はA日程出願者も対象とする。※看護学部はA日程出願者および大学入試センター試験利用入試(前期日程)出願者も対象とする。※看護学部は病院独自の奨学金との併用も可能。

優秀な学生を鶏口牛後で推薦合格者の挑戦も

同学のスカラシップ制度には、もう一つユニークな特徴がある。それは公募制推薦入試の合格者を除外することなく、改めて一般入試を受験してスカラシップのチャレンジを認めていることだ。

熱意ある学生にはどんどん挑戦の場を与え、その成果に応えていくという同学のスタンスは、もちろん進学先の多い中京圏で優秀な学生を確保していく成長戦略の一環でもある。それと同時に、その学生の意識の高さや学びの深さが、他学生にも良い影響を及ぼし、結果として組織全体に還元されることを見越しているのだろう。

事実、岐阜聖徳学園大学では外国語学部、経済情報学部でも名古屋を含めた中京圏の大学のなかで非常に高い就職率を誇り、人気度や偏差値データでは近年高い伸び率を見せているほか、上位大を狙える成績の学生が、あえてスカラシップを狙って同学を受験するケースもあるそうだ。

もちろんこうした“免除型”の奨学金には受給資格を維持するための努力も求められる。同学では毎年審査を行い、成績が基準に満たない場合は資格を失う場合もある。しかしそれゆえに高いモチベーションで勉学に取り組む充実した4年間が学生を磨き、人生の可能性を広げていくのだ。

修学困難者を支援する新たな奨学金制度もスタート

さらに同学では、2017年度から在学生を対象に「修学支援授業料減免」という制度を新設した。この制度は経済的に修学が困難となっている学生を対象とした支援プログラムだ。プログラム適用となれば、どの学部に在籍していたとしても年間授業料の半額が減免される。

昨今、保護者の失業や家庭環境の急変などから生じる経済的な問題で大学中退を余儀なくされる学生は少なくない。外的要因によって自身の夢を諦めざるをえない学生にとって、このようなセーフティネットはもっとも必要とされているものだろう。

奨学金システムを活用して優秀な学生を集める一方で、熱意ある学生を困難から守るという同学の取り組みが、前述した「質の高い教育環境」の一端を担っているのだ。

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